20130505Fuji1

エクセルのグラフで学ぶ気象学0046


横軸を温位とした熱力学図を描く (1)

 これまで描いてきたエマグラムは、横軸を気温、縦軸を対数目盛とした気圧としていた。ところで大気の安定性を調べる際には、横軸を温位とすると、その安定性を判断しやすいチャートを描くことができる。高度が上昇するにしたがって、温位が上昇する気層は安定しているとする基準が、わかりやすく描けるからである。そのためには、横軸を温位とした熱力学図を描く必要がある。

 乾燥断熱線図を描く(1)乾燥断熱線図を描く(2)乾燥断熱線図を描く(3)で、横軸を気温とした乾燥断熱線図を描く時に用いた式は、

Tv2P2.jpg"

であり、この式で、添え字1の付いた仮温度と圧力は高度1の値に、添え字2の付いた仮温度と圧力は高度2の値に対応する。高度1として、1000 hPaをとって計算すると、得られる乾燥断熱線は等温位線となる。温位を示す計算式は次のようになる。

PotentialTemp1.jpg"

 この式を変形して、仮温度を温位で表す式とすると以下の式が得られる。

PotentialTemp2.jpg"

 仮温度は絶対温度で計算しなければならないが、熱力学図の横軸を親しみ易い摂氏の単位とすると、計算式は以下のようになる。ここで、右肩にプライムの付いた仮温度と温位は、摂氏で表した値である。

PotentialTemp3.jpg"

 上に示した式を用いて、1000 hPaでの温位が-50 ℃から150 ℃まで、10 ℃ごとに計算した温度の高度変化を計算したシートを以下に示す。4行目に温位を記入し、列Rに気圧軸を記入した。それ以外のセルには、数式バーに示された式をコピーすれば完成である。

PotentialTemp4.jpg"

 数式バーに示されている数式は、E5セルのものであるが、文字が小さく読み取りにくいので下にコピーして示した。

    =((E$4+273.15)/($R5/$R$4)^0.28571)-273.15  

 得られたグラフを以下に示す。軸の目盛りなどに、若干の手を加えてある。左下から右上に上昇している線は、等温線である。

PotentialTemp5.jpg"

 このグラフから、地上から上空に向けて温位が一定の気層では、気温が次第に低下していることが分かる。1000 hPaで温位が80 ℃の位置を上空に向けて上にたどり、200 hPaの横軸と交わっている気温の線を調べると、-50 ℃の気温の線となっている。このことは、大気が不飽和の場合には、地上で80 ℃の場合、上空に向けて温位が等しいとすると、200 hPaの高度では気温が-50 ℃になっていることを意味する。 (2011.4.18)


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