20130226Fuji1

エクセルのグラフで学ぶ気象学0041


エマグラムの利用法 (2)

 前回は、水蒸気で飽和していない空気塊が上昇した場合、気温が乾燥断熱線に沿って低下すること、それにしたがって相対湿度が上昇すること、やがて空気塊が水蒸気で飽和して相対湿度が100 %となることなどを見た。そして、空気塊が水蒸気で飽和する高度(持ち上げ凝結高度)と、その時の空気塊の温度をエマグラムで読み取る方法を学んだ。今回は、水蒸気で飽和した空気塊を、さらに上昇させた場合の空気塊の状態変化をエマグラムで読み取ってみよう。

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 空気塊が水蒸気で飽和した後は、空気塊の温度と露点温度は常に一致し(湿数は0 ℃)、空気塊の温度は湿潤断熱線に沿って低下していく。この空気塊を気圧が500 hPaの位置まで上昇させると、青い矢印で示したように空気塊の温度と気圧は変化していく。500 hPaの位置の温度は、青い矢印の先端がエマグラムの温度軸と交差する点から約-13 ℃と読み取れ、飽和混合比は約 3.0 g/kgと読み取れる。したがって、6.5-3.0=3.5 g/kg の水蒸気が凝結して、水や氷晶の状態になったことになる。

 このようにして凝結した水蒸気は、空気塊の外部に降水として排出されることもあるが、空気塊とともに上昇を続けることもある。その場合は、水蒸気、水、氷晶を合わせた総混合比は変化しない。この例では6.5 g/kg のままとなる。

 このように、凝結した水分が空気塊の外部に排出されなかった場合は、その空気塊が再び高度を落としていくと、持ち上げ凝結高度に至るまで湿潤断熱線に沿って空気塊の温度は上昇し、混合比も次第に増加する。そして、持ち上げ凝結高度に至ると雲は消失し、その後、空気塊の温度は乾燥断熱線に沿って増加し、露点温度は等飽和混合比線に沿って増加する。すなわち、空気塊が上昇した場合の挙動と全く逆の挙動をする。その様子を以下の図に示す。このように、空気塊が上昇した後に、これと全く逆の過程をたどって下降した場合、元の状態に戻り、このような状態変化を可逆過程という。

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 次に、凝結した水や氷晶の一部が空気塊の外に降水として排出された場合を考える。例えば、空気塊の水分のうち、混合比で 2.5 g/kg 分の水分が空気塊の外に降水として排出されたとする。その場合、空気塊の混合比は、6.5-2.5=4.0 g/kg となる。この場合に、空気塊を500 hPaの高度から900 hPaまで降下させた場合の状態変化をエマグラムを使って調べてみよう。

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 500 hPaの高度で、-13 ℃、混合比 3 g/kgの空気塊は、4g/kg の等飽和混合比線と交差する点まで、湿潤断熱線に沿って気圧と温度を低下させていく。この状態は、下向きの青い矢印で示されている。この点までは、空気塊は水蒸気で飽和しているが、この高度からさらに低下すると、空気塊は未飽和状態となり、雲は消える。そして、これから先の空気塊の温度は乾燥断熱線に沿って上昇して行く。その状態は、下向きの黄色の矢印で示されている。高度 900 hPa まで降下すると、温度は約29 ℃、飽和混合比は約 30 g/kg となる。

 降水が生じたことによって、混合比が減少した結果、持ち上げ凝結高度は上昇し、エマグラムから読み取ると、それは 580 hPaであり、725-580=145 hPaの高度上昇となる。900 hPaの温度は、当初20 ℃だったものが9 ℃上昇している。一方、相対湿度は 4/30×100=13.3 % で、当初の値から38-13.3=24.7ポイントの低下となっている。900 hPaでの露点温度は約0 ℃で、6 ℃低下している。

 このように、凝結した水蒸気の一部が降水として空気塊から排出されると、空気塊が上昇したときに放出された凝結の潜熱より、高度下降時に吸収される蒸発熱が小さくなるため、元の高度に戻った場合の温度が初期温度より上昇する。すなわち、非可逆的な経緯をたどる。

  (2011.4.11)


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