湿潤断熱線図を描く (2) 前回は、湿潤断熱減率を計算する以下の式を導いた。
得られた式は少し複雑である。この式中の定圧比熱は、湿度(混合比)によって変化する。ただ、それを常に乾燥空気の値を取るとする近似をして定数扱いすると、式を簡略表示できる。まず右辺の最初の項は、乾燥断熱減率に等しく、以下のような定数となる。
次に、乾燥空気の気体定数を、水から水蒸気、水蒸気から水へと相変化する際に吸収あるいは放出される潜熱をとすると、湿潤断熱減率の式中の分子にある定数を、以下のようにまとめることができる。 右辺の分子中にある定数を計算すると、以下の値が得られ、これもまとめることができる。
これらの定数を係数で置き換えると、湿潤断熱減率を求める式は以下のように簡略表示できる。
それでも、飽和混合比が気温とともに変化することから、この式の計算は簡単ではない。
上記の式でもを乾燥空気の値として扱い定数化すると、、以下に示すような簡略式が得られる。
ここで、それぞれの定数は、以下のような値となる。
ただし、この式も気圧を少しずつ変化させながら、飽和混合比を逐次計算して、気圧の変化にしたがう気温を計算しなければならない。以下に、Stullの教科書に紹介されている方法で計算する手法を示す。なお、Stullの教科書では気圧の単位がkPAであるが、これを国内の一般的な単位であるhPaに変換した。
得られた飽和水蒸気圧と気圧を用いて、以下の式から飽和混合比が計算できる。 ここで、εは乾燥空気と水蒸気のモル質量の比の逆数となり、以下の値となる。
これらの値を用いて、先に示した気温の気圧による変化量の微分式を差分式に置き換えて、気温の変化量を計算する。ここでは気圧を20 hPa刻みで減少させながら、以上の計算を繰り返し、水蒸気で飽和した空気塊の高度上昇に伴って気温の低下を計算する。 |