対流凝結高度と対流温度
未飽和の空気塊が上昇すると、その空気塊の温度は乾燥断熱線に沿って低下し、やがて水蒸気が凝結し始め、雲が発生する。その高度は持ち上げ凝結高度(Lifting Condensation Level - LCL)と呼ばれ、この高度は対流性の雲の雲底高度に相当する。この点についいては、対流雲の雲底高度で、持ち上げ凝結高度については、エマグラムの利用法 (1)で説明した。
地上付近の空気塊が持ち上げ凝結高度まで達するには、上昇気流や斜面を吹き上がる風による強制的な持ち上げなどのきっかけが必要となる。一方、夏場の日中の強い日射によって、地表付近の温度が大きく上昇すると、地表付近の空気塊は浮力を得て上昇し、対流活動が開始されるようになる。対流によって上昇した空気塊は、乾燥断熱線に沿って気温が低下するため、やがて空気塊中の水蒸気が凝結を開始する。その高度を対流凝結高度(Convective Condensation Level - CCL )という。
対流凝結高度は、地表付近の空気塊の露点温度を通過する等飽和混合比線と気温の状態曲線との交点の高度となる。持ち上げ凝結高度と対流凝結高度との違いを、以下の図で示す。
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上の図の例では、地表付近の気温は29 ℃、地表付近の露点温度は23 ℃で、湿数は6 ℃である。上のエマグラムでは、地表付近の気温29 ℃を通過する乾燥断熱線を赤い実線で、地表付近の露点温度23 ℃を通過する等飽和混合比線を赤い点線で示してある。持ち上げ凝結高度は、この赤い実線と赤い点線との交点の高度である。この図から持ち上げ凝結高度を細かく読み取るのは難しいが、約915 hPaである。
この図を作成したエクセルで、試行錯誤的に計算すると、この乾燥断熱線と等飽和混合比線の交点の温度は21.5 ℃で、その高度は916 hPaと求められた。
一方、対流凝結高度は地表付近の露点温度23 ℃を通過する等飽和混合比線と気温の状態曲線との交点が示す高度である。状態曲線は式で示されているわけではないので、これらの交点を正確に求めることは難しいが、交点の気温は約21.1 ℃、その高度は約892 hPaと読み取れる。
このように、地上付近が絶対不安定の場合を除き、対流凝結高度は持ち上げ凝結高度より高度が高い。この対流凝結高度を通過する乾燥断熱線が地表の高度と交わる点での温度を対流温度(Tc)という。地表付近の温度が対流温度より高くなると、地表付近の大気は周囲の大気の温度より低くなることなく、したがって浮力を失うことなく対流凝結高度まで上昇することができる。対流凝結高度まで上昇した空気塊は、そこで水蒸気で飽和する。
水蒸気で飽和した空気塊は、その後は湿潤断熱線に沿って上昇するが、上の図では対流凝結高度を通過する湿潤断熱線を赤の破線で示している。対流凝結高度から上空では、湿潤断熱線は状態曲線(黒い実線)の右側にあることから、地表から上昇してきた空気塊の温度は周囲の大気温度より高く、この空気塊は上昇を続ける。
結局、地表付近の気温が対流温度より高い場合には、浮力のみによって上昇を開始し、上昇を持続することができる。この例で、地表付近の空気塊が対流活動によってどこまで上昇できるかをエマグラムで調べた結果が上の図である。この図では、約430 hPaの高度まで上昇することが示されている。この高度が平衡高度(中立浮力高度)となり、ほぼ雲頂高度に相当し、その高度は約6 kmである。
(2011.7.2)
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