雲の大きさと対数正規分布
ここで、μとσは、この分布の平均値と標準偏差を表さず、この分布の対数を取って得られる正規分布の平均値と標準偏差となる。対数正規分布の確率密度関数の形状は、μとσの値の選び方で大きく変化する。したがって、雲の大きさの分布が対数正規分布にしたがうといっても、観測結果によって適切なμとσを選択することが重要となる。
どのような形の分布をしているかは、グラフにすると分かりやすい。このグラフから、μとσの値によって、確率密度関数の形状がさまざまに変化していることが分かる。
次に、μを1に固定し、σを0.4から1.6まで、0.2刻みで変化させて確率密度関数の変化を調べたのが、以下のグラフである。このグラフを見ると、σが大きくなるにつれて、ピークの位置が左にずれて、グラフの左右の非対称性が大きくなっている。その逆にσが小さくなるにつれて、ピークの位置が右にずれ、グラフの左右の非対称性が小さくなることが分かる。ピークの高さは、σが1の時に一番低くなっている。
次に、σを1に固定して、μを0.4から1.6まで、0.2刻みで変化させて確率密度関数の変化を調べたのが、以下のグラフである。μが大きくなるにつれてピークは低くなり、ピークの位置が右にずれ、右に行くにしたがう減少程度が小さくなっている。その逆にμが小さくなるにつれて、ピークが高くなり、ピークの位置が左にずれ、右に行くにしたがう減少程度が大きくなっている。
雲の大きさの分布を対数正規分布で近似するには、観測に基づいてμとσの値を定める必要がある。ただ、この値は、時と場所によって大幅に変化するとされている。その一例が、シュトゥールの教科書の練習問題にみられる。そこで計算しているのは、μの値として1000 m、σの値として0.5が選ばれている。そして、雲の直径の確率密度を100 m間隔で、ヒストグラム表示している。それを連続した確率密度にして示したグラフを以下に示す。
この例では、雲の直径のモード(最頻値)は約800 mとなっている。
このグラフのμ=1.9、σ=0.5のパラメーターを用い、横軸をメートルに変換し、LOGNORM.DIST関数の最後の引数をTRUEにして描いた累積分布関数を以下に示す。
このパラメーター設定では、雲の直径が3000 mまでの累積分布は98.6 %となっている。このことから、このパラメーター設定では、雲の直径が3 kmを超える積雲が1.4 %の割合で発生することを示している。
|