等温位線
温位が等しい位置を線で結んだグラフを等温位線(isentrope)という。北半球の等温位線を描いた例が小倉先生の一般気象学に掲載されている。それは、西経80 °に沿って、赤道から北極までの温位の分布図になっている。これは、実測結果を基に描かれた1月の平均温位の分布図を転載したもので、それを下に転載させてもらう。
数値データーが示されていないグラフを模写するには、最近ではペンタブレットを使うのだろうか?1970年前後に学生時代を送った筆者は、計算結果は方眼紙に手書きしてグラフを描くのが当たり前だった。あのころはエクセルなどの便利なツールは存在しなかった。計算機を用いてグラフを描こうとすると、せいぜいラインプリンターの用紙をグラフ用紙に見立て、スペースの中に文字を埋め込んだ行を打ち出して、解像度の粗いグラフを描くのがせいぜいだった。あれから40年が経過したが、ここで手書きグラフの逆をやってみようと思った。グラフを方眼紙の上に印刷し、数値を読み取るのである。
まず、上に示した図3.6をスキャナーで読み取る。そして、その図を方眼紙の上に試し印刷して、図の目盛りと方眼紙の目盛りとが合うように、読み込んだ図の拡大倍率を調整して、改めて方眼紙の上に印刷した。偶然ではないのだろうが、縦軸の気圧の100 hPaの間隔を10 mmとすると、緯度の5 °の間隔がちょうど10 mmとなったので、作業は楽であった。
方眼紙に印刷されたグラフから数値を読み取って、エクセルのシートに入力した結果を以下に示す。あまり時間をかけずにラフに読み取ったため、それなりの読み取り誤差が存在する。なお、曲線の形を整えるため、もとのグラフの値を外挿した値を記入した部分がある。
散布図を描くと、以下のグラフが得られた。ラインにぎこちない部分があるが、それらしいグラフがとりあえず得られている。
空気塊が断熱変化をしている場合、温位は保存量(変化しない)であるので、空気塊は等温位線(面)に沿って移動することになる。そのため、上の図の北緯40 °付近の等温位線の傾斜が急な部分では、断熱変化をしている限り、空気塊は南風が吹いていると上昇気流があるように、北風が吹いていると下降気流があるように移動する。
南風に乗って上昇した空気塊は、断熱膨張によって温度が低下し、水蒸気の凝結が発生し雲が生じる。このように、等温位線に沿って上昇した空気塊の雲は、大気の静的不安定性によって生じる上昇気流に乗って生じる対流性の雲と比べて、でこぼこのない層状の雲となる。これが高層雲や巻層雲である。
以下に示す状態線図は、シュトゥールの教科書にある、高層雲が発生するときの模式的状態線図を模写したものである。
層状雲は、安定した大気層で生じ、空気塊に働く浮力は抑制されており、大気の移流による滑らかな形状の雲が発生する。
(2011.4.29)
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