気象予報士CPD制度について

CPDロゴ






1.気象予報士CPD制度の概要

1.1 目的と必要性

 気象予報士制度が平成6年度に導入されて25年が経過し、令和元年10月30日現在、10,533名が気象予報士として登録されています。その中のおよそ1割の気象予報士は予報業務許可事業者やそのほかの民間企業において気象業務に携わっており、また何割かは国や地方自治体において、さまざまな分野の気象業務に従事しています。そのほかの多くの気象予報士は、気象業務を本業とはしないが、気象予報士としての知識や技術を活かして、一般市民を対象とした気象知識や防災知識の普及活動などを行っています。

 気象予報士制度は天気予報の自由化にあたって、天気予報の品質を十分に確保する必要から生まれました。気象庁から提供される観測資料や数値予報資料等の高度な気象データを正確に理解して、適切に利用することができると認められた者を気象予報士として登録し、気象の予測は気象予報士に行わせることになりました。

 このようにして生まれた気象予報士という国家資格は、一度取得すると一生涯有効な資格となっています。ところが科学技術は日々進歩し、各種情報の多様化・高度化が進展しています。そのため、気象業務の実務者のみならず、一般市民向けの気象知識・防災知識の普及活動を行っている気象予報士であっても、絶えず最新の情報にアップデートしていく必要があります。

   CPDとは(Continuing Professional Developmentの略)継続的技能研鑽プログラムのことで、欧米では専門職に対しては広く取り入れられている制度です。国内においても他の国家資格である、技術士、建築士、測量士、RCCMなど、技術系の資格に取り入れられています。

 一般社団法人日本気象予報士会では、気象予報技術に関わる技能講習会、研究会、セミナー等を開催し、またWEBを用いて気象予報士への技術の維持・向上の場を提供してきました。また、複数の機関が気象予報士向けの講座を開催しており、公益社団法人日本気象学会をはじめ気象に関連する研究発表やシンポジウムも継続的に開催されています。

 これらの技能研鑽の機会を活用して技能の維持向上に努めた気象予報士を評価し、企業等においてより積極的に活用していくしくみを創設することによって、科学技術への関与、社会環境への対応と貢献に資するのが本CPD制度の目的です。

 現在、CPDを業務委託の総合評価の対象とする発注機関も出てくるなど、CPDの重要性がより高まってきていることから、CPD制度の運用は社会に対する責任であるとともに、技術系資格制度に求められるべき必須の要件となってきています。

1.2 これまでの経緯

 日本気象予報士会では、2005年3月に気象予報士向け気象技能講習会を初めて開催し、2008年には気象技能講習会を全国展開しました。また、2014年からはWEBによる気象技能講習会を開始しました。

 また、日本気象予報士会では2010年に気象予報士CPD制度創設に向けた検討を開始し、2010年12月に日本気象予報士会理事会で承認され、2011年から各方面に協力要請を行ってきました。

 2011年6月4日には、第1回気象予報士CPD制度創設準備委員会を開催しました。委員は団体、民間企業などの6人で、委員長に田中博氏( 当時、公益社団法人日本気象学会 常任理事 教育と普及委員会 委員長、筑波大学生命環境科学研究科 教授)、事務局長に平松 信昭氏( 一般社団法人日本気象予報士会 理事 副会長)を選出しました。

 第2回を2011年9月10日(土)に、第3回 を2011年12月10日(土)に、第4回を2012年2月18日(土)に、第5回を2012年4月28日(土)に開催し、気象予報士CPD制度創設に向けた検討を重ねました。そして、2013年8月31日(土)に開催した第6回準備委員会で、今後は運営委員会で詳細を議論することになりました。

 その後、2014年9月5日(土)に運営準備会を行い、日本気象予報士会が主体となって気象予報士CPD制度を試行することを確認しました。そして、2014年4月からは気象予報士会の会員向けに制度を試行しました。2015年4月11日(土)に第1回運営員会を開催し、運営委員会の規約の制定、認定委員の選定等を行いました。2015年8月9日(土)に第2回運営委員会を開催し、CPDポイント登録から認定までの作業確認と、日本気象予報士会の会員以外がCPDポイントの登録ができるようにする方針を確認しました。2017年2月4日(土)に第3回運営員会を開催し、CPD認定時の上限ポイントの改定、気象予報士CPD制度ロゴマークの制定等を行いました。

  制度を開始して3年が経過した2017年4月1日から認定申請の受付を開始しました。そして、1か月間の認定審査を経て、5月1日に10名の気象予報士がCPD認定者として認定されました。この際の認定作業の見直しを主な議題として、2017年5月25日(日)こ第4回運営員会を開催し、認定基準の見直しを行いました。

 一方、気象予報士のCPD制度に対する関心の高まりは弱く、認定申請を行う気象予報士はなかなか増加しない現状にあります。2018年4月7日(土)に第5回運営員会を開催しました。この会議の冒頭、気象予報士CPD制度の創設にご尽力頂き、この2か月前に永眠された株式会社応用気象エンジニアリングの故髙田𠮷治社長に黙とうを捧げました。そして、これまで暫定運用されていた運用細則について審議しました。

 2019年2月10日(日)に第6回運営委員会を開催しました。故髙田委員に代わって、安木委員が就任のあいさつを行いました。これまで8年間にわたって創設準備委員会の委員長、運営委員会の委員長としてご尽力いただいた田中博委員長の退任と、藤認文昭認定委員の委員長への就任を議決しました。そして、本制度の利用者を増やすための方策について審議しました。

 令和元年5月16日(木)に第7回運営委委員会を開催しました。議事録については、本サイトの気象予報士CPD制度運営委員会のページでご確認ください。これまで21名の気象予報士に対しCPD認定をしました。それぞれの分野で活躍している気象予報士です。

2 気象予報士CPD制度

 国内ではすでに多くの分野にCPD制度が存在し、その活動は年々活発となり、制度利用者の増加と、制度に参加する会員の利便の向上が図られてきました。一方、気象予報分野においては、2010年の時点でCPD制度は存在せず、気象予報士に特化したCPD制度を気象予報士CPD制度として提供することになりました。

2.1 気象予報士CPD制度の運営組織

 気象予報士CPD制度は、日本気象予報士会に設置する「気象予報士CPD制度運営委員会(以下、運営委員会と略記する)」が統括管理します。運営委員会は、日本気象学会、日本気象予報士会、協賛企業等から推薦された個人をもって組織されています。

 所定のCPDポイントに基づいて行う気象予報士CPD認定者の認定作業は、運営委員会がその委員を指名して組織されるCPD認定部会が行います。

2.2 気象予報士CPD制度の対象者

 気象予報士CPD制度の対象者は気象予報士とします。すべての気象予報士は、気象予報士CPD制度のウエブサイトを参照し、日本気象予報士会へCPD認定申請を行うことができます。

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2.3 CPDポイント実績表の作成

 CPDポイント実績表は、各気象予報士が日々の技能研鑽結果を記録することによって作成するものとします。任意の形式でもよいですが、認定申請手順のページに示されている形式のエクセルの表形式で記録されることを推奨します。気象予報士CPD運営委員会によって技能研鑽プログラムとして認定されたものは、本サイトの認定プログラムのページに示されています。各気象予報士が参加した講習会や講演会などが掲載されている場合は、それらのデータをエクセルの表に張り付けることによって記録を積み上げることができます。

 年間40ポイント以上の技能研鑽を3年間連続することによってCPD認定を受けられます。その認定は、日本気象予報士会に、技能研鑽経緯をまとめた表を送付し、認定審査を依頼することで開始されます。送付された研鑽結果を示す表を、運営委員会の認定部会が認定審査を行った上で認定さます。

3.CPDプログラムの形態と教育分野

3-1 CPDプログラムの形態

 CPDプログラムは、1.講習会等での受講、2.研究・調査発表、3.企業内研修およびOJT、4.技術指導、5.業務経験、6.委員会等への参加、7.その他の 7種類の形態に分類されています。以下、それぞれの形態に属するプログラムとそれらのプログラムを受講した際に付与されるCPDポイントの原則を表に掲げます。

 3-1-1 講習会等での受講
CPDプログラムの形態 CPDポイントの原則
講習会・研修会での受講 1時間当たり1.5ポイント(予習教材が配布された場合)
講演会・シンポジウムでの聴講 1時間当たり1.0ポイント
現場見学会等への参加 1日当たり3.0ポイント (0.5日単位)

3-1-2 研究・調査発表         
CPDプログラムの形態 CPDポイントの原則
研究・調査発表(査読あり)/単独 1編当たり15ポイント
研究・調査発表(査読あり)/連名・共著 1編当たり5ポイント
研究・調査発表(査読なし)/単独 1編当たり10ポイント
研究・調査発表(査読なし)/連名・共著 1編当たり5ポイント
技術図書の執筆 1ページ当たり2ポイント

3-1-3 企業内研修およびOJT   
CPDプログラムの形態 CPDポイントの原則
企業内の技術研修会(プログラムが明確なもの) 1時間当たり1ポイント
OJT(実施方法が明確で成果が示されるもの) 1件あたり5ポイント

3-1-4 技術指導         
CPDプログラムの形態 CPDポイントの原則
講習会・研修会等の講師 1時間当たり5ポイント
社内講習会等の講師 1時間当たり2ポイント
天気図検討会などの講師 1時間当たり2ポイント
学会及び協会が依頼した論文等の査読 1件あたり5ポイント

3-1-5 業務経験      
CPDプログラムの形態 CPDポイントの原則
国及び民間気象事業者において実施した予報業務 半月当たり1ポイント
テレビ・ラジオなどのマスメディアに勤務し、定常的に行う気象解説業務 半月当たり1ポイント
役所や企業における気象予報士として相応しい業務 半月当たり1ポイント

3-1-6 委員会等への参加            
CPDプログラムの形態 CPDポイントの原則
委員会等出席(議長・委員長の場合) 1時間当たり2ポイント
委員会等出席(委員・幹事の場合) 1時間当たり1ポイント
研究調査等への参加 1時間当たり1ポイント
国際的な技術協力への参加 1時間当たり1ポイント
地域活動への参加、及び社会的貢献 1時間当たり1ポイント

3-1-7 その他の活動      
CPDプログラムの形態 CPDポイントの原則
技術資格の取得(国家資格の場合) 1件当たり10ポイント
技術資格の取得(上記以外) 1件当たり5ポイント
自己学習(学会誌購読等でその成果が示されるもの) 1時間当たり0.5ポイントト


3-2  CPDポイントの教育分野別分類

 前項に示した活動別のCPDポイントは、下記のような教育分野に分類してポイントを付与します。

                 
大分類 記号 教育分野
専門技術 A 観測と成果の利用
B 予報に関すること
C 局地予報
D 精度評価
E 気象業務関連法規
F その他
関連技術 L コミュニケーション技術
M 情報技術
N その他
基礎知識 R 防災
S 環境
T その他気象
U 教養
V 法律・契約
W 倫理
X その他


3-3  CPDポイントの設定

 気象関係の技能研鑽を実施した際は、その技能研鑽の形態によってCPDポイントが定まり(例えば4時間の気象関連講演会に参加した場合は4ポイント)、その講演会の内容によってその合計ポイントを各教育分野に割り振ることになります(例えば、専門知識のB「予報に関すること」に2ポイント、基礎知識のR「防災」に2ポイント)。

 日本気象予報士会が開催している講習会や気象庁や気象学会、防災科学技術研究所、日本土木学会、日本雪氷学会等が主催している研究会の中には、CPD運営委員会によってすでにポイントが設定されているプログラムがあります。それらに含まれない技能研修プログラムを実施した際は、あらかじめポイントが設定されているこのようなプログラムのポイントを参考にしてポイント設定を行ってください。

3-4  CPD認定申請時の上限ポイント

 技能研鑽を継続するとCPDポイントが積みあがっていき、これは技能研鑽継続に対する励みになると思います。多くの講習会やシンポジウムに参加することによってポイントは積みあがりますが、技能研鑽は単一の形態で行うのではなく、幅広い形態分野で行うことによって一層技能に磨きがかかるはずです。

 そこで気象予報士CPD制度では、認定を行う際に単一の形態のCPDポイントには申請可能ポイントに上限を設けています。この上限ポイントは、第3回運営員会で前記の表に示すポイントとすることが定められました。

 すべての形態に上限ポイントが定められたことにより、年間40ポイントの基準を達成するためには、少なくとも2種類の形態で技能研鑽を行う必要があります。

 その他の中の資格取得については、長期間の技能研鑽の結果によって得られる成果であり、頻繁に発生する成果ではありません。資格取得した期間にほかの活動があったため、上限設定によって結果的に資格取得の評価が得られないことが生じることがあります。これを改善してほしいという要求があり、認定委員が審議した結果、資格取得には別枠を用意することになりました。

           
CPDプログラムの形態 CPDポイントの上限
講習会等での受講
30
研究・調査の発表
20
企業内研修およびOJT
20
技術指導
20
委員会等への参加
20
その他(資格取得を除く)
10
その他のうち資格取得
10

3-5  CPD認定基準

 技能研鑽を継続した証として、基準を達成した気象予報士を「気象予報士CPD認定者」として気象予報士会が認定します。現在の認定基準は、3年間に各年40ポイント以上で、必然的に3年合計で120ポイント以上となります。なお、この認定基準は運営員会で適宜見直される可能性があります。

 この認定の有効期間は3年間であり、認定取得3年後に再認定されない場合は失効します。