2014年2月8日の大雪時の降水量


 2014年2月8日は、関東各地で南岸低気圧通過に伴う大雪に見舞われた。この日の大雪の特徴は、日付が8日に変わってしばらくして降雪が始まり、降雪が続いた間は、氷点下の気温が継続したことにあろう。朝7時に起きた時には、自宅周辺はすでに3cm程度の積雪となっており、銀世界に変わっていた。それではいつから降雪が始まったのだろうか。通常なら降水量の測定結果からその時刻を推定できることが多い。しかし、今回は起床時点での降水量は0であった。最初から降雪であったか、当初は雨でも、降水量が0.2 ㎜(自宅の測器の最小測定値)に至る前に降雪に変化した可能性が考えられた。

 当日の午前0時から7時40分までの気温と気圧の変化を下のグラフに示す。赤が気温、グレーが気圧である。縦軸は気温の軸で、気温-1.0度の線に相当する海面気圧は1017.5hPaで、気温4.0度の線に相当する海面気圧は1020hPaである。横軸のMが午前0時である。

20140208Temperature.jpg

 午前2時を回った頃から、気温が急降下しており、気圧もそれとほぼ並行して低下している。低気圧の影響圏内に入ったこと、降雪に伴う気温低下が発生したと考えられる。そして、3時半に気温は氷点下に突入する。もはや、ヒーターのない降水計では降水量は測定できない。

   当日の午前0時から7時40分までの気温と相対湿度の変化を下のグラフに示す。赤が気温、水色が相対湿度である。縦軸は気温の軸で、気温-2.0度の線に相当する相対湿度は40%、気温4.0度の線に相当する相対湿度は100%である。横軸のNは正午である。

20140208Temperature2.jpg

   午前1時頃までは相対湿度が50%程度であったが、その後急激に湿度が上昇し、午前4時頃には90%となる。午前4時には雪となっていたことは確実だ。その後、気温は氷点下で推移し、降水計は午後7時半まで降水を記録することはなかった(結局、午後6時半まで降水を記録せず)。

 当日は、途中から暴風雪状態となり、屋上に設置している降水計の確認は危険が伴う作業となった、。そのため、屋上には上らず、隣の二階から降水計を確認したところでは、前回(2014年2月4日)の降雪時は、翌朝5日になっても、降水量計の北東側外周は真っ白だった(2014年2月4日の降雪による風向風速計の凍結と降水量)。2月8日の午後1時頃の降水量計の外観を東北東側から見た様子を以下に示す。

20140208Snow1300.jpg

 この頃は、すでに瞬間最大風速10 m/s内外の強風が吹いていた。4日の降雪時の翌朝の状態より付着している雪の量は少ない。前回の時は、翌朝になっても降水計の外周部の北東方向は真っ白だった。今回は、終日雪の付着はこの程度で、気温が上昇してきた夕方以降は付着している雪はほとんどなくなった。雪質がサラサラしていたことと、風速が強かったからと考えられる。風速が強かったことから、雪の付着はなかったが、雪の捕捉率はかなり低かったものと考えられる。

 庭のプランターやスイレン鉢などは、午前中から周囲が盛り上がって雪が付着していた。下に示したのは、午前10時半ごろのスイレン鉢やプランターの様子である。

20140208Snow1030.jpg

 周囲へ付着している雪は少なく、上に盛り上がって積もっている。屋上のように強い風が当たらない場所であることも影響しているだろう。これから2時間ほど経過した12時45分の様子は以下のとおりであった。

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 プランターの花(パンジー等)は雪にうずもれてしまった。スイレン鉢は、シャーベット状の氷が張ったが、周囲にリング状に降雪が盛り上がったものの、中央部の氷の部分に雪はほとんど積もらなかった。一方、降水計の上端部には終日雪が付着することはなく、雪国の降雪量計で見られるような、助炭に雪が盛り上がって付着するような姿とはならなかった。これも強風の影響があるからで、降水計はそれなりの雪は捕捉したと思われるが、設置高さが高いことから、捕捉率が低くなったであろうことは予想できる。

 下のグラフは最初に示した気温と気圧の関係をさらに2月9日の朝まで期間を拡張したものだ。その後の気圧の低下が著しいため、ここまで期間を広げると、雪の降り始めの気圧の変化は目立たなくなる。左側の軸は気温で、気温-2.0℃のところが海面気圧1000hPa、気温4.0℃のところが海面気圧1020hPaである。

20140208Temperature3.jpg

 午後8時に気圧が極小となり、午後10時半頃まで気圧の低い状態が続き、以降気圧はなだらかに上昇した。気圧がまだ低下傾向にある間から気温の上昇が始まり、気圧が極小になったころから気温は急激に上昇している。午前3時頃からの気温の低下は、通常の朝の冷え込みとも考えられる。ここで、注目するのは、午後6時半ごろ日中氷点下を続けた気温が0度を上回ったことであり、その時気圧の急降下がみられる。この時点で、積算降水量は未だに0であった。

 ここで、あっと驚く(当然?)ことが発生した。気温が0度を上回ると、直後から降水がカウントされだしたのだ。下に示したグラフは、気温と10分間降水量の関係を示したものである。赤が気温、水色が10分間降水量である。気温-2.0℃のところが10分間降水量0mm、気温4.0℃のところが10分間降水量0.6㎜である。

20140208Rain.jpg

 このグラフからも気温の上昇と降水量との関係が読み取れる。午前0時以降も降水が計測され、合計降水量は9.4 mmであった。気温と降水量の計測結果の関係は、降水の観測値を1時間降水量率で表すと、もっとわかりやすくなる。その関係を下のグラフに示す。気温が赤、青が1時間降水量率である。気温-2.0℃の線が降水量率0で、気温4.0度の線が1時間降水量率5.0mmである。

20140208RainRate.jpg

 気温と降水量率の関係が見事に見て取れる。もちろん、この降水の測定結果が実際の降水より大幅に遅れて記録されていることは言うを待たない。実際の降水量は、降雪量から推定するしかない。積雪量は、ベランダのアルミニウム合金製手すりの上で測定しておいた。下に示した状況は、11:00と11:30の測定の合間に撮影したものである。

20140208Snow1115.jpg

 この写真では、積雪量が7.5 cmと読み取れるが、尺が雪に触れないように積雪部から若干離して撮影しており、実際に尺の真横から上下の位置を確認すると、積雪量はこの見かけの値よりは大きくなる。

 下に示した測定時間帯では、手すりの下に水の滴りはほとんどなく、融雪量は少なかったものと考えられた(氷点下であり、北風が当たらない南側のベランダ)。この後の時間帯では、気温上昇で融雪が促進され、強風によって吹き飛ばされる雪も増加したことから、積雪量を用いた降雪量の推定は信頼性がなくなった。推定降水量は、サラサラとした雪だったため、雪水比を2.0 cm/mmとして計算した。

時刻 積雪量(cm) 降雪量(mm) 推定降水量(mm)
7:30
3
3
1.5
8:00
4.5
1.5
0.75
8:30
5
0.5
0.25
9:00
5.5
0.5
0.25
9:30
6
0.5
0.25
10:00
6.5
0.5
0.25
10:30
7
0.5
0.25
11:00
7.5
0.5
0.25
11:30
8.5
1.0
0.5
12:00
9.0
0.5
0.25
12:30
10.5
1.5
0.75
13:00
11.5
1.0
0.5
13:30
12.0
0.5
0.25
14:00
12.5
0.5
0.25
14:30
15.5
3.0
1.5
15:00
16.0
0.5
0.25
15:30
17.0
1.0
0.5
16:00
18.0
1.0
0.5
16:30
20.5
2.5
1.25
17:00
21.5
1.0
0.5
合計
21.5
21.5
10.75


 2014年2月8日の自宅周辺のアメダスの降水量の観測結果を見ると、日合計降水量は、小田原 31.0 mm、辻堂 33.0 mm、 海老名 34.0 mm、三浦 35.5 mmと同様の値となっているが、平塚は 13.0 mmとそれらの半分以下だった。自宅の降水量も、17時以降の値を加えると平塚アメダスの値程度になるものと考えられた。

 このように、積雪量から、雪水比を2.0と仮定して降水量を計算すると、ある程度納得のいく降水量が得られた。観測値がこの7割程度となっているのは、強風によって雨量計の捕捉率が7割程度に低下したことが原因と考えられた。一方、平塚の降水量が周囲のアメダスと比べて少ないことは、辻堂、海老名、三浦では16時以降の降水量が多いが、平塚では、このころから雪は弱まっていたこと、小田原は昼前から19時ごろまで一定して降水量があったが、平塚はその半分程度の降り方で終始したことなどから、実際に降水量が少なかったものと考えられた。辻堂の13時は8 mmとなっており、10分値で見ると、12:40が4㎜である。10分間に4㎜は、雪としては相当の降り方であったろう。

 2014年2月8日のアメダスの降水量の観測結果と積雪量の推移から推定した自宅の降水量のグラフを下に示す。

20140208AmedasRain.jpg

    平塚の降水量が少なかったことが目立つグラフとなっている。

 この日の自宅の降水の記録は、補正せずに、そのまま残すこととした。

 ところで、この日の小田原のアメダスの風向風速は、8:30から10:00までの10分値は風向静穏、風速が0となり、その後10:10から12:10が欠測となった。たぶん風向、風速計が雪で凍結してしまったのだろう。したがって、静穏の測定結果も欠測と修正されるものと思われる。

 最後に、自宅の気温と最大瞬間風速との関係を示したグラフを示す。赤線が気温で、縦軸は気温を示す。青線が最大瞬間風速で、気温-2.0 ℃の線が0 m/s、気温4.0 ℃の線が20 m/sである。

20140208HighWind.jpg

 風がもっとも強かった頃に、低気圧が最接近していた。低気圧が近づくとともに風が強くなり、気温が上昇したことがよくわかるグラフとなっている。小田原で静穏を観測していた頃が、静穏でなかったことは明らかである。

(2014.2.9)


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