殺人事件と野の花



事件概要

 日曜日の午後、野の花を摘みに出かけた二人の少女は帰って来なかった。射殺体で発見された少女たちには、容疑者の言い分と異なる重要な手がかりが残されていた・・・・。


オリジナル写真を用いた解説

図28のオリジナル写真のコピー

               図28のオリジナル写真のコピー

 銃口と標的との間の距離を「射距離」といい、その距離がどの位であったかを推定する作業を「射距離推定」という。

 射距離は、「接射」、「近射」、「遠射」に大分類される。

 「接射」は、銃口が標的に接触した状態で射撃された場合で、銃口を標的に強く押し付けた場合と、接触が緩やかであった場合などに小分類される。

 「近射」は、標的に弾丸以外の影響が及ぶ距離からの射撃で、火薬の燃焼ガスや未燃焼火薬粒が影響を及ぼす距離から射撃した場合で、射撃残さの分析から、射距離が推定できる場合が多い。

 「遠射」は、標的に弾丸以外の影響が認められない距離から射撃された場合で、射撃距離の推定材料が乏しい。


      図29の射距離6インチ(約15センチメートル)のオリジナル写真のコピー

   射撃残さが標的に影響を及ぼす距離は、銃器と使用実包の組み合わせで異なるため、正確な射撃距離を推定するためには、実際の事件に使用された銃器と実包を用いて射撃試験を行う必要がある。

 ただし、各種の銃器と実包の組み合わせによる実験結果が積み重ねられていることから、その都度実験を行わなくても、ある程度の精度の射距離の推定は可能である。射距離が15cm程度までは、燃焼、未燃焼の火薬残さが射入口周辺に密度の高く堆積する。生体の場合は、火薬が皮膚に刺さり、刺青のような痕が残る。


      図29の射距離12インチ(約30センチメートル)のオリジナル写真のコピー

 射距離30cmを超えると、射撃残さの堆積は一般的に薄くなる。

 標的(被害者)に残された射距離情報は、被疑者の供述の真偽を確認する上で重要な手掛かりを提供することが多い。


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