図26のオリジナル写真のコピー
ここに示された比較写真は確かにぼやけていて分かりにくく、線条痕が合っているといえばいえるが、良く分からない写真である。線条痕の鑑定を専門としているものにとっては残念であるが、このような場合は、付着塗膜片の方から、より真実に迫る手がかりが得られたのかも知れない。赤で囲んだ部分に、鮫の背びれ状の形が見える。
工具痕(線条痕の対応関係)の鑑定は、物と物との接触関係を直接証明するものではなく、線条痕の対応関係が異常に良好な部分があった場合に、「その痕跡は、それらの物体が互いに接触して生じたものとしか考えられない」、と結論するものである。その結論を導くための過程は、
(1)それらの物体が接触した可能性のある場所を探すこと、
(2)そのような場所があった場合に、物体全体の変形状態や位置関係から、それらが実際に接触した痕跡と考えて矛盾がないかを検証すること、
(3)その後、痕跡の微細な部分の対応関係を検証する、
という手順を踏むことになる。
発射弾丸や打ち殻薬きょうの痕跡の場合では、弾丸や薬きょうが銃器の特定部位としか接触しないことが前提としてあり、上記の(1)と(2)の確認手順が単純化可能で、定式化されている。
一方、互いの運動の間に拘束関係が弱い交通事故の場合には、互いの接触場所を探すことがまず問題となる。また、微細な痕跡より、車両の大きな変形状態の方が確実性の高い物証となるであろう。本事例のように、高速で回転している車輪に接触したとされる場合では、そもそも特定の場所同士が接触し、その部位に対応線条痕が存在するという考え方そのものに疑問が生じる。
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