巡査とシャベル


事件概要

 窃盗事件の捜査で容疑車両を調べに回ったパトカーと連絡が取れなくなってしまった。ミシガン州警察挙げての大捜索が行われたが・・・・・・。

 容疑者の車のトランクにあったシャベルと、警察官の装備品が埋められていた場所の土の塊に残されていた痕跡との間にある関係とは。



オリジナル写真を用いた解説

図20のオリジナル写真のコピー
                図20のオリジナル写真のコピー

 実体顕微鏡と思われる顕微鏡の前でポーズをとる原著者。鑑定作業の様子を写真撮影することによって、鑑定結果の証拠能力を高めることがあるが、この写真は事件解決の後に撮ったものに違いない。

 このエピソードでは、犯罪関係現場で採取された証拠物が次々と犯罪捜査研究所に運ばれ、行方不明となった警察官の捜索活動にフィードバックされているのが驚きである。広大な地域をカバーしなければならないアメリカで、鑑定結果を即座に出すためには、証拠物件の輸送と鑑定作業を極めて迅速に行わなければならない。

図21のオリジナル写真のコピー
                図21のオリジナル写真のコピー

 写真だけを見ると、鉛弾丸に残された発射痕と見違えるような線条痕である。粘土質の土壌ならではの結果と思われる。同質の物体に対して付けられた工具痕(シャベルの先端で掬い取った痕)であることから、工具痕の比較の作業条件としては良好である。

 容疑者が逮捕された場所に停車していた車のトランクから発見されたシャベルと、被害者の衣類や装備品が埋められていた場所に残された土の表面の工具痕を対応させることができたことは、容疑者と犯行を結びつける証拠としての価値は高い。このような証拠物件を採取できたのは、日ごろの工具痕鑑定で培った鑑識眼があってこそである。


隠れた証拠に戻る