未解決の一家皆殺し事件 - あなたが陪審員です




事件概要

 ミシガン湖畔の高級別荘地で家族6人が射殺される事件が発生した。指紋などの犯人に直接つながる証拠はなかった。現場に遺留された多数の弾丸や打ち殻薬きょうを調べるうちに謎が解けてきたように思えたが・・・・・。

 あなたが陪審員だったら、これらの証拠物をどのように解釈しますか?



オリジナル写真を用いた解説

図10のオリジナル写真のコピー
                図10のオリジナル写真のコピー

 これは、打ち殻薬きょうのきょう底面を比較した比較顕微鏡写真である。口径0.22インチの縁打ち式実包の薬きょうの底面を比較しており、時計の12時の位置に付けられている楔(くさび)形様の凹みが撃針痕である。本書にある4枚の比較写真を、順に紹介する。これらの写真は、比較顕微鏡で撮影されているが、カラー写真であることは珍しい。大事件であることからカラー写真でも撮影したものと思われる。米国では、1990年代半ばまでの比較顕微鏡写真は、4”×5”のモノクロのシートフィルムで撮影するのが一般的であった。米国ではアメリカン・オプティカル社の比較顕微鏡が広く使用されており、ポラロイド写真の導入は早かったが、35mmサイズの安価なカラー写真の撮影を行うようになったのは、ドイツのライツあるいはライカ社のDMC型比較顕微鏡が広く使われるようになった1990年代後半からと記憶している。

 縁打ち式薬きょうでは、薬きょう底面の縁(周辺部)の内面に点火薬が塗布されており、その部分を撃針で打撃することによって発火させ、その火は発射薬の急激な燃焼を引き起こす。この燃焼によって発生する高温高圧ガスによって弾丸が発射される仕組みである。弾丸発射時に薬きょう内部では、高温高圧ガスの圧力が各方向に等しい力で作用することから、薬きょうは膨張する。撃針痕は、撃針が薬きょうを打撃する作用と、その後の薬きょうの膨張力の総合作用の結果として残される。

 この比較写真では、撃針痕の楔形様の形状は互いに類似していることが確認できる。このような形状は、同一の図面をもとに製造された撃針によって付けられた撃針痕では、互いに類似したものになる。すなわち、同一型式の銃器では同様の形状になることから、「型式特徴」と呼ばれている。

 ただし、たとえ品質管理が徹底していたとしても、顕微鏡で検査しても区別できないほど全く同一のものを製造することは極めて難しい。撃針は点火薬を発火できさえすれば用が足りるものであり、全く同じ形状のものを作ることが目的ではないことから、同じ型式の銃器であっても、撃針の形状の差異は意外と大きい。現実には、各撃針の表面形状には微妙な差異があり、各撃針を区別できるような撃針表面の差異を「固有特徴」と呼んでいる。

 一方、同一の撃針で打撃した撃針痕が全く同一の形状をしているかというと、そうでもない。撃針は打撃の度に表面がわずかであっても損耗する。発生する火薬の燃焼圧力もその都度異なり、薬きょうの材質や表面形状も1発ごとに微妙に異なる。これらの影響が重なりあい、同じ撃針で打撃した撃針痕であっても、顕微鏡で詳細に検査しても全く区別が付かないほど同じものが2個付けられることはない。

 この写真は、型式特徴が同一で固有特徴が異なることを説明する写真として示されているが、この写真から固有特徴が異なることを確認することは難しい。

 薬きょう底面の中央部にある「U」の記号は、ユニオン・メタリック・カートリッジ・カンパニーが設立当時から縁打ち式実包に用いてきたきょう底記号である。この会社はその後レミントン銃器会社の経営権を握り、レミントン・アームズーユニオン・メタリック・カートリッジ・カンパニーと社名を変更した。その後レミントン・アームズ社へと社名を変更したが、縁打ち実包のきょう底刻印の「U」は継続して使用されている。

図11のオリジナル写真のコピー
                  図11のオリジナル写真のコピー

 これは、左側が現場薬きょうで、右側は口径0.25インチのベレッタ自動装てん式けん銃による打ち殻薬きょうとの間の比較写真である。両社で、型式特徴が類似していることを示しているものと思われるが、専門家でもこの写真からそれを判断することは難しいであろう。訳者自身が長年調べてきた結果でも、薬きょうの底面に残される発射痕から、口径0.25インチのベレッタを特定する型式特徴が何であるかの結論は得られていない。

 口径0.25インチのベレッタは、この事件当時でも米国にはイタリア製とブラジル製があったと思われるが、ともに銃身跳ね上げ式(ポップアップ銃身)といわれる形式を採用している。自動装てん式けん銃では、実包を装てんした弾倉をけん銃に挿入しただけでは、引き金を引いても弾丸は発射されない。スライドを後方に引いてから戻すという操作を行うことで、初弾を弾倉から薬室に送り込む必要がある。この操作で、撃鉄も引き起こされ、発射準備が完了する。

 このスライドを引く操作は意外と力が必要で、女性では指を痛くしてしまうことがある。初弾を装填しやすくしたのがポップアップ銃身で、フレーム左側面にあるレバーを操作すると銃身が跳ね上がり、銃身後端部にある薬室に実包を装てんして銃身を押し戻し、撃鉄を親指で引き起こせば射撃準備完了である。

 ポップアップ銃身を採用している口径0.25インチのベレッタ自動装てん式けん銃では、銃身を押し戻す操作時のトラブル防止のため、通常の自動装てん式けん銃にある抽筒子(薬きょうの縁をくわえて、打ち殻薬きょうの排出を確実に行えるようにする部品)がない。したがってこの種のけん銃から排きょうされた打ち殻薬きょうには、抽筒子痕が残されない。しかし、抽筒子痕がないからといって、ベレッタと特定してしまうわけにはいかない。抽筒子のあるけん銃の打ち殻薬きょうでも抽筒子痕が不鮮明で、どこに抽筒子痕があるのか特定しにくい場合が、特に小口径のけん銃では多いからである。

 一方、口径0.25インチのベレッタ自動装てん式けん銃の打ち殻薬きょうでは、薬きょうの縁の部分が弾倉の側板頂部に挟まれて、深さのある「マガジンリップ痕」が付けられることが多い。マガジンリップ痕は、口径0.25インチのベレッタ拳銃の特徴となりえるが、この写真ではマガジンリップ痕は確認できない。

 本事件の現場薬きょうは、きょう底刻印がないという特殊なものであった。わが国が第2次世界大戦までに使用してきた軍用の実包にはきょう底刻印がなかったが、世界的にはきょう底刻印のない実包は珍しい。右側の薬きょうには「WESTERN 25AUTO」のきょう底刻印が見られる。この記号は、米国のオーリン社ウィンチェスター・ウエスタン実包製造部が使用している製造所記号と口径表示である。

図13のオリジナル写真のコピー
                  図13のオリジナル写真のコピー

 これは、薬きょう側面に付けられた薬室痕の比較写真で、この事件の被疑者を犯行と結びつける上でもっとも重要な証拠物となったものである。弾丸発射の際に発生した高温高圧ガスによって薬きょうは膨張し、薬室から排きょうされる際に、薬きょうの側面は薬室内面と擦れ合い、薬きょうの軸方向の線状擦過痕が付けられることがある。これを打ち殻薬きょうに残される薬室痕と呼んでいる。

 薬室は、ドリルやリーマーによって加工されることから、その製造加工工具痕は、薬室内面の円周方向の線条痕で、薬きょうの排出方向とは直角のものが多い。、したがって、薬きょう側面に残される薬室痕は、薬室の製造工具痕の影響を直接受けることはほとんどない。したがって、薬室痕は発射銃器の固有性を示したものとなる。

 薬きょうは、黄銅板等を深絞り加工して製造されるが、その製造過程で薬きょうの側面には、ダイとの間で擦過による加工工具痕が残されることがあり、その痕跡は排きょう時に付けられる薬室痕と性状が類似している。この深絞り加工工具痕は、連続製造された薬きょう数百個に類似性を示す痕として残されることがあるとされている。したがって、深絞り加工工具痕も、同一時期に製造された実包を用いているとして、証拠価値が出る場合もある。ただし、連続して製造された薬きょうは、一旦ホッパーに貯められてから装てん器(ローダー)に送られることから、販売されている1箱の中に詰められた実包が、必ずしも製造順で包装されているとは限らない。薬きょうを専門会社から購入している実包製造業者もあり、この場合では、薬きょうの製造から実包のローダーに供給されるまでの過程で順番の混合はさらに進んでいる可能性がある。

 薬室痕や深絞り加工痕は薬きょうの周囲360度に等質な線条痕として残されるため、どこを見てもある程度類似しているという問題があることから、これらの痕跡が同一工具(薬室やダイ)由来と推定するためには、かなり良好な線条痕の対応関係に基づかなければならない。この写真の部分の線条痕の対応関係は良好である。

 

図14のオリジナル写真のコピー
                   図14のオリジナル写真のコピー

 この比較顕微鏡写真でも線条痕の対応関係は良好であり、図13に示した比較顕微鏡写真とこの写真の撮影位置の関係に矛盾がなければ(互いに等距離だけ離れた位置で撮影された写真であれば)、これら2個の薬きょうが同一の薬室から排きょうされたものとの結論は間違いないであろう。ただ、撃針痕の比較写真も見たいところではある。


 容疑銃器を押収できなかった事件の鑑定作業

 銃器を使用した事件では、発射弾丸や打ち殻薬きょうが、発砲行為の証拠物として残される。その証拠物と所持者が判明している銃器とが結びつけば、事件解決の強力な手がかりになるとともに、その後の裁判で有罪を立証する証拠物となる。このような証拠物が残されることは犯罪者にとって不利であることから、使用した銃器を遺棄して証拠品の隠滅を図ることは至極当然のことである。

 この一家皆殺し事件では、使用された銃器を発見することは結局できなかった。このような場合でも、事件に使用した銃器を犯人が別の場所でも発射していれば、その場所に残された弾丸や薬きょうを用いて発射銃器の特定が可能となる。ところが、このようにして得られた証拠の信頼性が、その後の裁判で問題となることが多い。国内の事件では、「白鳥事件」、「平取猟銃一家殺人事件」の証拠物件がこの例に当たる。

 この種の副次的に発生した証拠物件と殺人事件の現場弾丸類との間で行われた痕跡鑑定では、痕跡の対応関係もさることながら、副次的に発生した証拠物件と容疑者との関連性も問題となる。いくら痕跡の対応関係が良好であろうとも、副次的に発見された弾丸や薬きょうと容疑者の関連が薄いのであれば、容疑者と殺人事件との結びつきを証明するための証拠価値は低い。「ひとたび警察官になったら」のエピソードでは、容疑銃器が別の場所で発射された場合で、その結びつきが極めて強い例が紹介されている。

 ここで紹介されている事件では、副次的に発見された証拠物は、容疑者スクロッギンズの家族が所有する土地に作った射場から採取された打ち殻薬きょうで、容疑者あるいはその周辺人物が所有していた銃器による打ち殻薬きょうと考えるのが自然である。白鳥事件では幌見峠、平取猟銃一家殺人事件では森の中という不特定の人間が立ち入り可能な場所から発見されている。この場合、その証拠物件と容疑者との結びつきは、周辺者の目撃証言などに基づくことになるが、銃器の所持が厳しく制限されているわが国では、同種の銃器を多数のものが所持しているというような環境ではないため、全く関係のない第3者の銃器による発射弾丸や打ち殻薬きょうが発見されることは少ない。逆に、そのような可能性があれば、その第3者に関する捜査を徹底して行わなければならない。

 このようにして発見された証拠物には「植え付け証拠」の可能性も考えられる。白鳥事件では、事件の2週間ほど前に幌見峠で試射したとされる弾丸が、事件の約1年半と2年経った時期に各1個発見されたが、これらの弾丸は警察が捏造した証拠物なのではという疑いが生じた。落葉腐蝕土中から発見されたにもかかわらず、弾丸の変形が少なく表面が滑らかであり、表面の腐食も少なかったという。幌見峠と気象条件が類似した中国東北部で行った埋設実験で、実験に用いられたすべての弾丸の金属表面には応力腐食割れが生じたが、証拠弾丸にはそれが見られなく不自然と弁護側の鑑定人から指摘された。

 白鳥事件では、このようにして得られた弾丸と白鳥警部の体内から摘出された弾丸との間の発射痕の異同識別は、最初に科学捜査研究所で行われたが、その鑑定では痕跡の類似部位はあるが、同一けん銃による発射弾丸との結論は得られなかった。その結果が公表されないまま、再鑑定が東京大学の磯部教授に依頼され、体内摘出弾丸と幌見峠で発見された2個の弾丸が異なるけん銃によって発射された可能性は1兆分の1以下であるとする鑑定結果が提出された。

 物的証拠がこれらの弾丸しかない事件は、その後の裁判は20年にも及び、当時のイデオロギー闘争に深い影を落とすことになった。


AR-7 ライフル銃

 このエピソードには、AR-7ライフル銃とベレッタ自動装てん式けん銃が登場する。そのうちAR-7ライフル銃は、米国のアーマライト社が設計製造したサバイバル銃として有名である。アーマライト社は米国が軍用小銃(自動小銃、突撃銃)としてベトナム戦争以来実戦に使用してきたM16を設計製造した会社である。またAR-7は、容易に分解して部品を銃床(ストック)に収納できたり、ストックに収納した状態でも、組み立てた状態でも水に浮く銃として有名である。

 アーマライト社は、1954年10月1日に、航空機製造会社として有名なフェアチャイルド社の銃器製造部門として設立された。同社は設立当時から、軽合金やプラスチックを多用した銃器の軽量化並びに、合理化された製造法によるコストダウンに今後の銃器開発の方向性があると信じていた。その方向性で、まず民間用のライフル銃を開発し、それが成功すれば、おのずと軍用に転用されるだろうと考えて開発を行っていたところに、当時使用していたサバイバル銃の更新の依頼が米国空軍から入った。空軍パイロットは、不時着時、友軍からの救援が来るまでの間、何日間か動物や敵から身を守らなければならない。その際に使用するのがサバイバル銃である。

 この空軍からの依頼に対して、すでに開発を進めていた銃を土台に、わずか2、3週間で試作銃が空軍に評価用に提出された。それは、口径0.22ホーネット実包を使用するAR-5ライフル銃で、空軍での評価に合格し、MA-1サバイバル・ライフル銃として制式採用された。

 アーマライト社は、このMA-1のアイデアを用いて、口径を0.22インチ・ロングライフルとしたAR-7サバイバル・ライフル銃を開発し、民間市場で販売した。その一部は陸海空及び海兵隊でも軍用のサバイバル銃として使用された。AR-5とAR-7は、使用する実包が異なるだけでなく、ボルトアクションと自動装填式という発射機構の違いがある。

AR5
        アーマライト社のAR5 (The Charter Arms Storyより転載)

 AR-5で採用した口径0.22インチ・ホーネットは、小動物(バーミント)の狩猟用実包で、これが使用できるライフル銃にはボルトアクション式のものしか販売されておらず、命中精度の高い狙撃用実包として知られている。口径0.22インチ・ホーネットと口径0.22インチ・ロングライフルの実包は、威力のみならず価格でも大きな開きがある。開発したサバイバル銃を、民間用として販路を拡大するためには、口径0.22インチ・ロングライフルの選択がどうしても必要であった。ただ、口径0.22インチ・ロングライフルでは、その威力は限定的になる。

チャーターアームズ社のAR-7
        チャーターアームズ社のAR-7 (The Charter Arms Storyより転載)

 銃身、機関部体、箱型弾倉、銃床、銃床パッドの5部品に容易に分解できる。
水に浮かぶAR-7
        水に浮かぶAR-7 (The Charter Arms Storyより転載)

 何といってもAR-7は水に浮かぶライフル銃として有名である。組み立てた状態でも、分解してストックに収めた状態でも水に浮くとされている。川や湖を越えなければならないサバイバル環境では、銃が水に浮く特性は、銃の喪失を防ぐ上で大変便利である。
 

ストック後方写真
        AR-7の銃身、機関部体、箱型弾倉をストックに収納した状態を
        ストック後方から見たところ (The Charter Arms Storyより転載)

ストック側面写真
 部品を収納したストックを真横から見たところ (The Charter Arms Storyより転載)

 部品を収納したストックを側方から見ると、単なるストックにしか見えない。この状態での全長は41センチメートルしかない。

 AR-7は、あの007のジェームズ・ボンドが「ロシアより愛をこめて」で、Qから渡された特別仕立てのアタッシュケースの中に入っていた銃として有名である。当時としてはまだ新しく、珍しい銃であったと思う。日本公開は1964年で、その当時観ているのだが、詳しいことは忘れていた。最近(平成18年11月)DVDの新盤が発売されたので、早速観てみた。DVDはゆっくり検証するのには大変便利だ。

注意 この後には、ロシアより愛をこめての映画の展開に関する記述があります。

 ボンドが、このアタッシュケースを紹介されるときの英語のせりふ
Q Branchi has put together a smart-looking piece of luggage. We're issuing this to all double-O personel. An ordinary black, leather case, with 20 rounds of ammunition here and here.

If you take the top off, you'll find the ammunition inside. In the side here, a flat throwing knife. Press that button there, and out she comes.

Inside the case, you'll find an AR-7 folding sniper's rifle. It's .25 caliber with an infrared telescopic sight. And if you pull out these straps, inside are 50 gold sovereigns. Twenty-five in the either side.

日本語字幕
 平凡な黒のケースだが、銃弾20発が収納されている。フタを開けると中に入っている。
 ここには、投てき用ナイフだ。ボタンを押すと飛び出す。
 中にはAR7型狙撃銃が入っている。25口径で赤外線照準器付きだ。
 ここには金貨が内蔵されている。両方に25枚ずつだ。

日本語吹き替え
 一見ただの革ケースだが、実は弾丸20発がここにある。上蓋を開ければ中に弾(たま)が詰まっている。
 そして側面には投てき用平刃ナイフ。ボタンを押せば、ホラ、出てきた。
 カバンの中にはAR7狙撃用ライフルが収まっていて、口径は25口径。赤外線照準器付だ。
 両側のストラップを引くと、50枚のソブリン金貨が出てくる。片方で25枚。

 ところで、口径0.25インチのAR-7は製造されたことがない。この実包がけん銃用25ACPであるとすると、狙撃銃としてはいかにも威力不足だ。省略で25口径と言ったとすると、25-20ウインチェスターあたりの口径であろうか。これなら少しは現実味がある。257ロバーツなら、その後のシーンとの整合性が少しは出てくる。ただ、銃弾が収納されている黄銅製のパイプは、その太さから見て、22ロングライフルの実包以外を入れることは難しそうだ。

 「ロシアより愛をこめて」の中では、このAR7は3回使用される。クリレンコ(Krilencu)の狙撃、ヘリコプターの搭乗員の狙撃、及びモーターボートのキーの場所を吐かせるためにスペクターの一味の一人を脅す場面である。クリレンコを狙撃した時は、射撃のタイミングをすでに外した後に急いで撃っているような場面で、射撃した後に大きな反動を受けた様子が見て取れる。これでは当たらなかったなという感じだが、見事命中。あの大きな反動は257ロバーツでないと出ないか?

 ヘリコプターを狙撃する場面では、遮蔽物を探すのにじっくり時間をかけてから、慎重に射撃し、ボンドの上に手りゅう弾を落とそうと、手りゅう弾の安全ピンをはずした直後の搭乗員の肩に弾丸を命中させ、ヘリコプターの中で手りゅう弾が破裂し、その後ヘリコプターは火炎に包まれて墜落する。

 モーターボートのキーのありかを吐かせる場面では、AR-7の様子がもっとも良く見える。確かにAR-7のように見える。ところで、その後、弾丸で穴が開いたモーターボートの燃料の入ったドラム缶を湖に落とし、漏れ出した燃料に火をつけることになるが、着火用にはAR-7は使わず、モーターボート備え付けの信号けん銃を用いて信号火炎弾を発射しているところが、少し現実的である。22LRではドラム缶に弾丸が命中しても、点火するだけの火花が出るとは考えられないので。
 


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