久しぶりにこの会を訪れ、挨拶をするという貴重な機会を与えられた。ただ、現在の私に皆様方のお役に立てることとして何が話せるかというと戸惑いがある。そこで数分の間、私とＡＦＴＥの関係について思いつくことを話すことにする。

　私は１９５６年にミシガン州警察の巡査に採用された。私は上司から、「お前は危険な仕事には向いていないので、研究所の仕事をしろ」と言われ、この仕事に就いた。研究所の仕事をしていた関係で、１９６０年にアメリカ法科学会に入会した。アメリカ法科学会は、その頃までは、いつもシカゴのドレイク・ホテルで総会を開いた。その会場には、驚くほど広いスイートルームがあり、そこには豊富な酒と食べ物が用意されており、たばこの煙と、多くの男たちで満ち溢れていた。そう、男だけ。

　そこにいた男たちの多くは、フェデラルやウインチェスター、ハイスタンダードなどのアメリカの大手銃器会社や実包会社の男たちだった。その人たちの多くは、今では銃器の歴史の伝説的な人物になっている。その中には銃器の鑑定者もいた。シカゴという場所柄、シカゴの鑑定者が多かった。シカゴ警察犯罪捜査研の男たちは、ジョン・ストーファーを始め、ジョン・ソールジャーズ、ジョン・ルーマスなど皆ジョンだった。その他の都市の鑑定者も加えて、このような男たちの間で、「アメリカ法科学会は、俺たちを代表しているのだろうか？」という議論が生じた。「アメリカ法科学会には多岐にわたるセッションがある。クリミナリスティックのセクションもあるが、銃器と工具痕の発表をどこでしたらよいのか分からないじゃないか？」

　ウォルター（注：ウォルター・ヘーヴェ）が指導力を発揮して、１９６９年のそのホテルの部屋に集まっていた３５名で新たな会を組織することを決定した。ウォルターは、私がこれまでに会った中で最も明晰な男であるとともに決断力に優れた男だった。とりあえず、ウォルターが初代会長となり、会は組織された。１９７０年に集まったとき、皆で会則を作り（注：会長の任期は１年となった）、続いて次期会長の選任をすることになった。その時のことを私は今でも鮮明に覚えている。その席で、ウォルターは、次期会長は若い人がいいと思うが、というので、私も「そう思う」と答えた。続いて、私の会長の任期中に、私の仕事を良く手伝ってくれた人の中から選びたいが、といった。そこで私も「それがいい」と答えた。この会の評判を上げてくれる人を選びたいと思う。というので私も「そうだ」と答えた。そうしたらウォルターは、この条件に合うのはチャーリー、お前しかいないと言い出した。私は「何をばかな、私にそんなことができる訳ないだろう。」と答えた。するとウォルターは、「私がバックアップするから大丈夫だ。」といって取り合ってくれなかった。

　その後の１年間は、まさに興奮に満ちたものだった。何事にも変えられない経験をした。いまどれだけのお金を出しても、この経験を買うことはできないだろう。当時の会には資金が一切なかった。一方で私には職場があった。私は会員名簿の作成や会員証の作成に職場の女の子に手伝ってもらった。女の子は、喜んで、ただでやってくれた。今だから言うが、何を隠そうミシガン州の納税者の負担でＡＦＴＥの運営を行ったのだ。

　１９７１年には、独自の講演集会をシカゴで計画した。我々はアメリカ法科学会の分科会の位置づけであり、その大会の会費内で行うことを検討した。そこで私はアメリカ法科学会の大会長と経費の交渉をした。大会長は、「いいだろう。会場費、機材費はこちらの会費から負担しよう。ただし、バンケットの費用はそちらが別に負担してくれ。」とのことだった。講演論文も集めなければならなかった。幸い良い発表が多く寄せられた。会員が３５名しかいないにもかかわらず、アメリカ法科学会の分科会であったため、学術集会には１００名以上の聴衆が集まってくれた。その後アメリカ法科学会の会長が、「数あるセッションの中で、チャーリーのところのセッションが一番おもしろかった。」と言ってくれた。これで独自の講演会を開催した苦労が報われたと思った。これがＡＦＴＥの大会の事始めである。

　ここで最初の女性会員となったスーザン・コーマが来ているので紹介しよう。先ほど挨拶を交わしたところだ。今日、このように多くの女性会員が集まっているが、その先駆けとして苦労をされた方だ。

　最初３５名で出発したこの学会も、今では１，０００名を超える会員を抱えるようになったという。今回の発表プログラムを見たが、どれも素晴らしい講演であった。ＡＦＴＥの設立精神が受け継がれているものと喜ぶ。みんな、良くやっている。

　終わりにこの言葉で閉める。また来るからね、いいかい！

　　２００９年６月４日（木）　於　マイアミビーチ　リゾートホテル＆スパ