自宅の測定値は、周辺の測定値と比較して明らかに低い。ヴァンテージプロ2の風速計の測定精度は、大型の風杯を用いている場合は、±1.0m/s以内とされている。平均風速は、自宅と最も近い値が小田原で、小田原との平均風速差は1.1m/sあり、測定精度の範囲を上回っている。最大風速では、差の最も小さい海老名との間で1.3m/sの差があり、最大瞬間風速では、差の最も小さい海老名との間で3.8m/sの差がある。
普段から、我が家の風速の測定値は、他の測定ポイントの測定値より小さめだが、風速が小さいときは異常とは思えない程度の差であり、風速計の故障ではなさそうだ。ただ、測定高度が低いことから、風速が小さめになっていることは十分考えられる。
一方、実際の強風被害を見ると、落ち葉、花弁やごみの散乱が著しかったとはいえ、周囲の樹木の枝折れはほとんどなく、倒木は一切見られない。風速が大きかった地点での被害状況とはかけ離れているように思える。最大風速が15m/sを超えていたり、最大瞬間風速が25m/sを超えてはいなかったのであろう。
風速の測定値の推移を見ると、平均値だけでは分からないことも明らかになるであろう。そこで、2012年4月3日の10分ごとの測定値を比較して見た。
2012年4月3日、自宅周辺で風が特に強かったのは16時ごろから19時半ごろまでであった。上のグラフを見ると、19時過ぎまでは、自宅と小田原のアメダスの最大風速の測定値との対応は良好である。この日に小田原の最大風速の最大値は19時30分から19時40分までの10分間に記録されており、その時は平塚ではすでに風が収まる方向にあった。
辻堂の最大風速は平塚の値よりだいぶ大きいが、平塚ではまだ風がそれほど強くないうちに大きな最大風速を記録しており、平塚では強い風が収まり始めた以降に、その日の最大値を記録する幅の広い高い山がある。このような強い風は、その時の平塚では収まり始めており、これも現象が異なるように思われる。
横浜の最大風速は、平塚の最大風速が記録されたと同じ時刻に記録されている。横浜の風の収まり方も、平塚より大分遅れている。三浦の最大風速の最大値は、平塚で風が収まり始めた以降に記録されている。
海老名の風速は、平塚の自宅の風速の値と最も近いが、平塚では風が弱かった午前7時過ぎから風が強まっており、これも現象が異なるように思える。海老名のその日の最大風速の最大値と、最大値が記録された時刻は平塚のそれと近いが、平塚の風が収まり始めたころにも、風が強かったことが分かる。
三浦はいつも平塚より風が強いが、この日も全体的に平塚より強い風が吹いていたことが分かる。
最大瞬間風速についていえば、平塚と小田原の値は、それほど違和感のないもので、19時ごろまでは、ほぼ同等に見える。ところが、平塚では強い風が収まり始めた19時30分から19時40分の間に、小田原では28.1m/sという極めて大きな値を突如観測している。
辻堂の最大瞬間風速の値は平塚の値より、ほぼ1日中大きく、18時40分から18時50分の間に、この日の最大値である28.6m/sを記録しているが、その前後の最大瞬間風速も大きな値で推移している。23時過ぎになって、この強い風もようやく収まってきている。
小田原と辻堂で最大瞬間風速の最大値を記録している頃に、平塚で最大瞬間風速の値が逆に小さくなっているのは偶然であろうか?
横浜の最大瞬間風速は1日中大きく、18時50分から19時00分の間に30.6m/sという極めて大きな値を記録している。横浜地方気象台は、海岸に近いのに標高が39mある場所に位置し、風速計が地上高20.1mの位置に設置されている。一方の、我が家の風速計は標高は5m、地上高度8mの場所に設置されており、その高度差は標高で56mもある。このことが、最大瞬間風速の値には大きく影響を与えているのだろう。
海老名の最大瞬間風速の値は平塚の値と近いのだが、少し大きめとなっている。三浦は、平塚の値が横ばいの内に上がり始め、その分最大値が大きく、値の下がり方もゆっくりとしていることが分かる。三浦の風速計の設置場所の標高は42m、風速計の地上高が10mで、我が家の風速計の高さより約40m高い。
以上の点から、我が家の風速の測定値が周囲の地点の風速の測定値より小さいのは、風速計の誤差というより、風速計の設置場所が低いこと、その土地の風速が本来小さいことの二つの理由が重なっているものと考えられた。
最後に、2012年4月3日の周辺各地の風速を比較した19:00のアメダス地図形式の図を掲げる。
風速の分布は複雑で、地形を考慮してさらに調べる必要がありそうだ。
(2012.4.10)
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