20130128Fuji1

エクセルのグラフで学ぶ気象学0026


飽和水蒸気圧曲線を描く (2)

 前回は、水面あるいは氷面に対する飽和水蒸気圧と温度との関係を表す理論式であるクラウジウス・クラペイロンの式を導いた。式の導出に、いささか長い過程が必要であったため、前回はエクセルの出番がなかった。今回は、このクラウジウス・クラペイロンの式を用いて、飽和水蒸気圧をエクセルで計算してグラフにしてみよう。

 最初に、前回導いたクラウジウス・クラペイロンの式を以下に改めて示す。

ClausiusClapeyron24.jpg"

ここで、T0.jpg"は、水の三重点の温度を絶対温度で表したもので、T02.jpg"である。e0.jpg"は、水の三重点における飽和水蒸気圧で、e02.jpg"である。

水蒸気の気体定数はRv2.jpg"、水から水蒸気へと相変化する際の潜熱Lv.jpg"は、Lv2.jpg"、氷から水蒸気へと相変化する際の潜熱Ld.jpg"は、Ld2.jpg"とする。

 この式の値をエクセルで計算するにあたって、最初にこれらの定数をセルに代入しておこう。下の図に示したように、 B1 セルにe0.jpg"の値を書き込み、 C1 セルにLv.jpg"Rv.jpg"で割る計算式を書き込んだ。同じく D1 セルにLd.jpg"Rv.jpg"で割る計算式を書き込んだ。

ClausiusClapeyron25.jpg"

 列 B には、摂氏目盛の温度をオートフィル機能を用いて記入した。列 A には、列 Bの値に273.15を加える式を書き込み、絶対温度目盛りの温度とした。実際の計算では、列 Bの値ではなく、列 Aの値が参照される。列 Bは、グラフの軸の表示のために用意したものである。

ClausiusClapeyron26.jpg"

 上の図の数式バーに C3 セル記入した数式が表示されている。この数式を列Cのその他のセルにコピーする。D3 セルには、 C3 セル記入した数式の中の $C$1 を $D$1 と書き換えた式を書き込む。そして、この式を列Dのその他のセルにコピーする。これで、水面と氷面に対する飽和水蒸気圧の計算ができる。この表には、水面に対する飽和水蒸気圧と、氷面に対する飽和水蒸気圧の差の計算も行った。そのためには、列Cマイナス列Dという式を列Eに書き込むだけでよい。具体的には、E3セルに=C3-D3 と書き込んで、下にコピーすればよい。

 グラフを描くには、列B と 列C を選択して、挿入-散布図と辿れば、水面に対する飽和水蒸気圧の温度による変化を示すグラフは完成する。下のグラフは、軸の表示などに若干手を加えたものである。

ClausiusClapeyron27.jpg"

 このグラフから、温度上昇に伴って、飽和水蒸気圧が急激に上昇することが分かる。

 氷面に対する飽和水蒸気圧の温度の変化のグラフを描くには、列B と 列D を選択して、挿入-散布図と辿る。温度0℃からマイナス20℃までの間の、水面に対する飽和水蒸気圧と氷面に対する飽和水蒸気圧の温度変化を一つのグラフに描くには、列B 、列C と 列Dを選び、挿入-散布図と辿る。そこで描かれたグラフに若干の手を加えたのが下のグラフである。0℃以下の水は過冷却水と呼ばれ、過冷却水面に対する飽和水蒸気圧を示す。

ClausiusClapeyron28.jpg"

 氷面に対する飽和水蒸気圧が、過冷却水面に対する飽和水蒸気圧より若干低いことが分かる。

 下に示すグラフは、過冷却水面に対する飽和水蒸気圧と氷面に対する飽和水蒸気圧の差の温度変化を示したものである。このグラフは列B と 列E を選択して、挿入-散布図と辿れば描くことができる。このように離れた領域を選択する場合には、コントロールキーを押しながらマウスをドラッグする。

ClausiusClapeyron29.jpg"

 上のグラフの温度がさらに低下した部分がどのようになるかも知りたいところだ。そのようなグラフを作成するには、最初に示したエクセルの表を、さらに低温側に延長する必要がある。そのためには、3行目をマウスでポイントし、そのまま下にドラッグして複数の行を選択し、そこでマウスの右クリックをして現れる選択ボックスの「挿入」を選択して、行を挿入する。列Bの値をさらに低温側にオートフィルするには、マウスをドラッグして-18-20のセルを選択し、マウスで-18のセルの右下角をポイントし、ポインターが黒い十字マークに変化したら上向きにマウスをドラッグする。これで、2℃間隔の温度目盛りデーターがオートフィルされる。

 その他のセルは同じ列の任意のセルの内容をコピーすればよい。

 このようにして、温度軸を-100℃まで延長して作成した計算結果を基に描いた、過冷却水面に対する飽和水蒸気圧と氷面に対する飽和水蒸気圧の差の温度変化を示すグラフを以下に示す。

ClausiusClapeyron30.jpg"

 過冷却水面と氷面に対する飽和水蒸気圧の差が、マイナス60℃以下ではきわめて小さくなることが分かる。なお、この差が最も大きくなるところは-12.4℃付近であることが、温度間隔を細かくして計算した結果から分かる。

 ここで計算したは飽和水蒸気圧は、理論式であるクラウジウス・クラペイロンの式に基づくものである。この計算結果は、他のテキストに示されている飽和水蒸気表の値とは若干異なる。そのような差が生じた理由として、温度が変化しても潜熱が変化しないとしたことが挙げられる。次回は、実験式に基づく飽和水蒸気圧のグラフを描いてみよう。


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